歴史散策ノート : 古事記の神様系図
1ページでだいたい分かる古事記
神の出現
天と地が初めて分かれた時、天上界の高天原に姿形、性別を持たない存在であるアメノミナカヌシをはじめとした5柱が現れる。この5柱を別天神という。
男女の神々
次に現れた2柱の神も姿形を持たない無性の単独身である。そして男神と女神が次々に現れる。6代目に人間の姿を整えた男神と女神、そして7代目に互いに求愛する男神イザナキと女神イザナミが現れる。この神々を神代七代という。
国産み
イザナキとイザナミが鉾で海水をかき回して大地をつくる、オノゴロ島である。2神はオノゴロ島に降り立ち、高天原とつながる大柱を建てて国作りを始める。淡路島、四国、隠岐諸島、九州、壱岐、対馬、佐渡、そして近畿地方を中心とした本州を生む。こうして8つの島々を生んだので日本列島を大八島国という。その後、大八島国に宿る神々も生み、高天原の神々も神々を生み、天地は神であふれる。
黄泉の国
イザナミが17番目の火神、カグツチを出産する際に火傷で死に、怒ったイザナキが火神の首を剣ではねたところ、剣についた血から神々が誕生する。イザナキはイザナミを追って黄泉の国(死者の国)へ行き、戻ってくれるよう懇願する。イザナミは黄泉の神と相談する間、決して私の姿を見ないようにと言い残すが待ちきれないイザナキはイザナミのおぞましい姿を見てしまい、2神は永遠に離別することになる。(日本で最初の離婚)そしてイザナミは黄泉津大神となる。
最高神アマテラス
黄泉の国から戻ったイザナキが禊をすると、左目からアマテラス、右目からツクヨミ、鼻からスサノオが生まれる。日神アマテラスに高天原を、月神ツクヨミに夜の世界を、スサノオに海の国を治めるよう命じる。高天原は葦原の中つ国(高天原と地下の黄泉の国との中間にある地上の世界)と一体なので、アマテラスが天地に君臨する最高神となる。
天の岩屋戸隠れ
スサノオだけが父の命に背き統治をせず、目に余る乱行は過激になるばかり。その様子を見て失望したアマテラスが天の岩屋戸に隠れてしまう。日神が居なくなり天上も地上も暗闇に包まれたため、タカミムスビの子で知恵の神オモイカネが対策を立てる。芸能の神アメノウズメが上半身裸で踊って神々を沸かせ、様子が気になったアマテラスが戸の隙間から顔をのぞかせたところ、「あなたさまより立派な神がおりますので皆喜んでいます」と言って鏡を向けた。鏡に映る自分の姿を見たアマテラスが身を乗り出すと、剛力の男神アメノタジカラオが外へ引き出した。そうして天上界にも地上界にも再び太陽が輝きわたるようになった。
ヤマタノオロチ
神々の審判により天上界を追放されたスサノオは、地上界に降りると娘を間に泣き悲しむ老夫婦に出会う。老夫婦はアシナヅチとテナヅチ、娘はクシナダヒメである。娘がヤマタノオロチの生贄になることを悲しんでいたので、スサノオは退治する見返りに娘との結婚を要求した。スサノオがオロチを酒に酔わせて切り裂いたところ、中から剣が出てきたので、アマテラスに献上した。これが草薙の剣である。スサノオはクシナダヒメを妻に迎え、出雲に宮殿を建てて住むことにした。そこで八雲立つの日本最初の和歌を詠んだ。
因幡の白うさぎ
スサノオとクシナダヒメの6代目の子オオナムジにはたくさんの異母兄弟の神々が居た。兄弟はみな美人で評判のヤガミヒメと結婚しようと因幡(鳥取県)を目指す。末子のオオナムジは兄たちに荷物持ちをさせられ、遅れて因幡を目指した。道中で毛皮のない裸のうさぎを見つけて事情を聞くと、うさぎは隠岐の島から海を渡ろうと鮫を騙し、怒った鮫に毛皮を剥がれてしまった。そこに兄神たちが通りかかり、海水を浴びるといいと聞いてその通りにしたら、傷が悪化してしまったという。オオナムジは真水で洗って蒲の穂を敷いて休めばいいと教え、うさぎは回復した。するとうさぎは、ヤガミヒメを妻にできるのはあなたしかいないでしょうと予言した。
オオクニヌシの国作り
うさぎの予言通りにヤガミヒメと結婚したオオナムジを兄たちが殺そうとしたが、オオヤビコがオオナムジをスサノオの居る根の堅州国(地底の国・黄泉の国と同一説有り)に落ち延びさせる。スサノオはオオナムジを地上界(葦原の中つ国)の勇者と見込んで数々の試練を課した。オオナムジはスサノオの娘スセリヒメの助力によって切り抜けることに成功。スサノオは2人の仲を認め、オオクニヌシとなって葦原の中つ国を治め、天に届くほどの宮殿を建てることを命じた。そうしてオオクニヌシは出雲で国作りを始める。ヤガミヒメは出産するもスセリビメの嫉妬を恐れ、子を木の俣に置いて実家の因幡へ帰った。オオクニヌシは各地を平定しに行き、あちこちの国で妻をめとった。そこへスクナビコナの神がやってきて、農業や人々の健康、薬などについての助言をした。スクナビコナが常世国(海の彼方の異郷)へ帰ってしまったが、突如、海上に現れたオオモノヌシの協力を得られた。
国譲りと出雲大社
オオクニヌシが国作りを完成させると、アマテラスが中つ国を譲るようにと、アメノホヒ(スサノオとの誓約によりアマテラスの勾玉から生まれた)を中つ国へ派遣したが、アメノホヒは中つ国での生活が気に入り、3年が過ぎても帰ってこなかった。次にアメノワカヒコを派遣するが、オオクニヌシの娘シタテルヒメの夫になり8年が過ぎてしまう。最後にタケミカヅチ(カグツチが死んだ時に生まれた武勇の神)が派遣されると、オオクニヌシは、領地を継ぐ息子たちと話をつけてほしいと言った。息子のコトシロヌシは承諾、タケミナカタは力比べを挑むが、州羽海(諏訪湖)で追い詰められて降参する。そうしてオオクニヌシは中つ国を譲ることを承諾するが、スサノオの命を果たすため、出雲に高天原に届くほど高く立派な柱を持った住まいを建てることを条件にし、天界の神々も認めた。こうして葦原の中つ国はアマテラスの統治するところとなり、国つ神オオクニヌシは出雲大社に鎮まった。
天孫降臨
葦原の中つ国を治めるため天界から天降りがはじまる。アマテラスがスサノオの剣から生み出したアメノオシホミミの息子のニニギに委任し、三種の神器を託した。天の岩屋戸に引きこもった時に外へと招いた鏡、勾玉、スサノオがヤマタノオロチから得て献上した草彅の剣である。ニニギはコノハナサクヤ(花が咲き誇る栄光)と結婚し、父であるオオヤマツミノカミから姉のイワナガヒメ(石のような永遠の生命)をも献上されるが拒否する。永遠の生命を拒否したため、天つ神でありながらいつか死を迎える運命、人間と同じ存在になり、その子孫も皆人間となる。
ウミサチビコとヤマサチビコ
コノハナサクヤがホデリ(ウミサチビコ)、ホスセリ、ホオリ(ヤマサチビコ)を出産。ホオリが兄の釣り針を借りたが海中に落としてしまい、見つけられないでいると、塩椎(しおつち)の神がやって来た。海神の娘が助けになってくれると、海神(わたつみ)の宮殿への行き方を教えた。ホオリはわたつみの神の娘、豊玉姫を妻に迎え、そのまま3年居座った後、魚たちに探してもらい釣り針みつけた。兄に返す際に後ろ手で返す呪いの仕草に、呪いの言葉も添えた。その後、兄弟がそれぞれ農耕をするも、水を司るホオリだけが成功する。こうしてホオリがニニギの権威を受け継いだ。豊玉姫が出産にやって来たが、本来の姿に戻るところをホオリが覗いてしまい、豊玉姫は子、ウカヤフキを置いて帰ってしまう。子が気がかりで玉依姫が来るが、後にウカヤフキはおばの玉依姫を妻に迎える。玉依姫は4人の男子を生み、末子のイワレビコが後の神武天皇となる。日向三代とは、アマテラスの勾玉から生まれた神を父とし、山の神の娘と結婚したニニギ、その子であるホオリは海の神の娘と結婚したため、3代かけて天地海のすべてを治める存在となったウカヤ、それを継承するのが初代天皇である神武天皇となる。
ヤマトタケル
12代景行天皇が妃候補のエヒメ、オトヒメをオオウスに迎えに行かせたところ、オオウスは一瞬で心を奪われてしまい、そのまま自分の妻にしてしまう。父には黙って身代わりを差し出したが、オオウスは罪悪感から父を避けるようになる。天皇がオウスに、なぜ兄のオオウスは食事の席に現れないのか、ねぎ教え諭せと注意したところ、オウスは兄の手足をもぎ取り死骸を投げ捨てて、「ねぎました」と言った。恐怖心を抱いた天皇は、オウスを朝廷から遠ざけるため西方征伐を命じる。西のクマソタケル兄弟の宴の席に女装で潜り込んだオウスは、すきをついて兄クマソを剣で刺した。それを見た弟クマソは、私どもより勇猛なあなたにふさわしい、ヤマトタケルの名を差し上げますと言ったが、言い終わると同時にオウスは弟クマソをも殺した。こうしてヤマトタケルとなって都に帰還したが、父はすぐに東方征伐を命じた。ヤマトタケルが出動にあたって伊勢神宮を参拝すると、おばのヤマトヒメは草薙の剣を授けた。尾張の国に到着したヤマトタケルはミヤズヒメと結婚しようと思ったが、東征後に帰還した時にと、約束を交わして出発した。ヤマトタケルは東へ進軍して朝廷に反抗する蝦夷どもを平定して再び尾張の国へ帰り、ミヤズヒメと結婚した。それから伊吹山の神を討ちに出かけるが、神の力を使わずに勝利してやると、草薙の剣をヒメのもとに置いていった。剣神の加護がなくなり、山の神の怒りを買ったヤマトタケルは負傷し、帰還する道中にびわ湖の手前(もう少しで倭)で力尽きた。ヤマトタケルの死後、ミヤズヒメは熱田神宮で太刀を祀った。
伊勢参りをした際にたくさんのお社を目にして、神様の相関関係を調べてみようと思いました。
古事記に登場するエピソードを知っていると、事の成り立ちが分かり、神社参拝や散策は数倍楽しいものになりました。
このページは、古事記入門の位置づけとして、大雑把に全体像をつかむことを目的として作成しています。
神の出現からヤマトタケルまで。伊勢神宮、出雲大社、そしてなぜ草薙の剣が熱田神宮に奉納されているかまでを範囲としています。
自身が覚えるために作成したページですが、どなたかの古事記入門の助力になれば幸いです。
参考文献:
古事記 ((上)) (小学館文庫―マンガ古典文学)里中 満智子 (著)
100分de名著(NHKオンデマンド) 93〜96 古事記(全4回)
古事記に関する本を何冊か読みましたが、入門編としては漫画や動画がおすすめです。漫画はかなり忠実に詳細まで描かれていました。動画は読み解き解説で、様々な角度からの考察がたいへんおもしろいです。